サウスポーも会員となっている 一般社団法人 日本プロモーショナル・マーケティング協会(JPM)。専務理事の宮久哲実さんに、サウスポーより発行した著書「多馬力マーケティング」の書評と、成果に結びつく統合的なメディアマーケティングの秘訣についてお話を伺いました。
成果向上に寄与するトリプルメディア連携強化の一助となる良書

本を片手にメディアマーケティングの現状についてのお話と、書評をくださった宮久さん
宮久哲実
一般社団法人 日本プロモーショナル・マーケティング協会(JPM)
専務理事
宮久哲実
1956年生まれ
早稲田大学法学部 卒業
1980年 株式会社博報堂 入社
SP局~プロモーションデザイン局~マーケットデザイン戦略推進局~関西統合ソリューション局 局長~第2 プランニング局 局長を経て2016年から一般社団法人 日本プロモーショナル・マーケティング協会
出版物
編著『プロモーショナル・マーケティング ベーシック』宣伝会議 2019年
購買プロセスの変化について
従来の「AIDMA」「AISAS」は時系列型
消費者の購買行動プロセスについて1920年代のアメリカで提唱されたのが「AIDMA」。
それから約1世紀近くの時を経て、2004年に電通がより時代に即した購買行動プロセスをモデル化すべく「AISAS」を発表しました。「AISAS」では、それまでにはなかった2つのS、「SEARCH(検索)」「SHARE(共有)」が組み込まれ、これらが現在でも引き続き重要なプロセスとなっています。
「AISAS」は商品に興味関心(INTEREST)を持ったら検索(SEARCH)をし、検索をして欲しくなったら購買(ACTION)をする、そしてその商品やサービスの感想をシェア(SHARE)する、という流れです。
その当時はまだスマートフォンが無かった時代で、iPhoneが日本に上陸したのは2008年のことですから、当時は画期的な内容でまさに先見の明があったと言えます。
「AIDMA」「AISAS」までは購買行動プロセスが時系列の時代でした。
パソコンの時代は家に帰ってからではないと検索もシェアもできなかったので、2008年まは消費行動が時系列のプロセスで動いていたのです。それがスマートフォンが普及して以降、購買行動プロセスに大きな変化が生まれました。
現在は時系列ではなく、行ったり来たりする「RsEsPs」モデル
その後の10年間での爆発的なスマートフォンの普及で、今では若者のスマートフォン所持率は98%(※)とも言われてます。
スマートフォンを持ち歩いていることで、街中やお店で商品と出合うと、リアルタイムで検索したりシェアしたりすることが可能になりました。
モバイルデバイスとしてのスマートフォンの普及と、SNSの進展との相乗効果により、購入の前後で検索や共有を行ったり来たりしながら検討するようになり、消費行動が一方通行ではなくなったのです。
この購買行動が劇的に変化したタイミングで、現状の実態に従来の購買行動プロセスのモデルがマッチしていないのではないかという問題意識から、協会メンバーが約3年間の間検討・協議し、今回提唱したものが「RsEsPsモデル」です。

出典: 一般社団法人 日本プロモーショナル・マーケティング協会(JPM)
これは従来の「SEARCH」「SHARE」という2つのSに加えて「SPREAD(拡散)」のSも加わり、かつ認識、体験、購買のそれぞれのフェーズの前後に3つのSが双方向に行き交う形で発生していることを意味しています。
従来の一直線の時系列型の購買行動プロセスから、より複雑になった現在の購買行動をできるだけシンプルにモデル化しています。
現状マーケットと企業のSP施策のギャップ
アーンドメディアのコントロールが難しい
複雑化する消費者の購買行動プロセスと、企業が行うセールスプロモーション施策との間で生まれているギャップの一つに、アーンドメディアを効果的にコントロールできていない、ということが言えると思います。
アーンドメディアとは、メディアマーケティングで必要とされているトリプルメディアの中の一つで、ペイドメディア、オウンドメディア、と並ぶメディアカテゴリーのことです。従来はテレビや雑誌などにお金を払わずして獲得する(earn)露出のことを指していましたが、今ではSNSにおける個人の口コミなどもその一つとして捉えられています。

出典:宣伝会議「トリプルメディアを駆使したコーポレートブランディング戦略とは」より
ちなみに……
ペイド(paid)メディア:お金を払って買うメディアのことで、テレビや新聞・ラジオなどの広告、インターネットのバナーやリスティングなど。オウンド(owned)メディア:自分のメディアのことで、HPや自社の看板など。アーンド(earned)メディア:お金を払うわけでもなく自分のものでもない、雑誌の編集記事で取り上げてもらうことや、SNSなどでの口コミのこと。(※SNSの口コミなどは、アーンドメディアと分けてシェアードメディアと語られることもあります。)
お金を払うことで得られるペイドメディアや、自ら作ることができるオウンドメディアと違い、自社がコントロールできないアーンドメディアを自社の商品にとって有利に導く方法を、現在どの企業も模索中の状態であると言えるでしょう。
アンコントラブルだからこそ信頼性の高い口コミ
上記で述べたように、SNSでの口コミなどは企業側からするとトリプルメディアの中で最もコントロールが難しいため、逆に消費者にとっては信頼が高いものとなります。
ペイドやオウンドはあくまで企業側から自分にとって都合の良いメリットを訴求しているので、最終的に購買を決心させるには弱く、アーンドメディアが一番の有効なバイイング情報になります。
しかしこの「多馬力マーケティング」にもありますが、SNSでの口コミなどをコントロールするとステルスマーケティングになってしまい、ブランドを毀損してしまうことにもなり兼ねないので、決してやってはいけません。
アーンドメディアでの高評価の情報が消費者に一番影響力を与えることはどの企業も分かっているけれども出来ない、それに対する有効な施策が見つかっていない、ということが現状の問題点であると思います。
トリプルメディア連携を強化するために

本書の内容を踏まえつつ、会員コミュニティの重要性を語ってくださいました
今後のメディア事業部のあり方について
アーンドメディアのコントロールを強化するため、専門の部署を作ることをこの本でもおすすめしています。もちろんその選択肢も一つだとは思いますが、そうすると投資対効果が約束できない活動であることから、担当者にとっては苦しいところもあるでしょう。
まずはそういった事業を専門にしているサウスポーさんに依頼するのもはじめの一歩として良いかもしれません。(宣伝、ありがとうございます!)
またアーンドメディアがバイイング情報として重要であるということは、一消費者である私たち企業人にも想像に難くないと思います。そしてこの考えを現場の人間だけでなく、会社の上層部の人たちとも今一度認識を揃え、トリプルメディアを統合してマネジメントしていく部署を設けることも必要なのではないでしょうか。
会員を軸にした口コミ戦略に勝機あり
この本の中で、口コミを増やす施策の一つとしてモニター会員などから会員コミュニティを作っていく方法が述べられています。
会員を持つことで一番のメリットとして感じるのは、消費者の本音が得られる機会が増えるということです。
消費者に購入を決心してもらう訴求方法として、商品のメリットを消費者が求めるベネフィットに変換して伝えること、ということがこの本にも紹介されています。
いわゆるメーカー発信のスペックではなく、いかに消費者の心を動かす伝え方ができるかということが、セリングポイントをバイイングポイントに変える一番の重要課題と言えるでしょう。
そのような消費者の本音を直接聞くことができ、また有効な口コミマーケティングの施策を行うことができる会員コミュニティを持つことは、今後企業にとってメディア戦略を推進する上で有効な一手となると思います。
成果を上げるマーケティングのための一冊
今後のメディアマーケティングを語る上でアーンドメディアでの良い評判の獲得、特に口コミをいかに企業から強制しない形で作り、拡散させていくかということが大切になってくるでしょう。
まずはこの本を読む、もしくは専門であるサウスポーさんに相談してみることで、一歩踏み出せずにいる担当者や企業の肩の背中を押すことができるんじゃないかと思います。
※NTTドコモ モバイル社会研究所が発表した「2019年一般向けモバイル動向調査」より
http://www.moba-ken.jp/project/others/ownership03.html
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